代表理事のご挨拶


代表理事 小山 望

 博士(社会福祉学)

 公認心理師、臨床心理士

田園調布学園大学

 人間福祉学部心理福祉学科長・教授

 大学院人間学研究科心理学専攻 教授

 現代社会にはさまざまな差別や偏見があります。例えば、障がい者に対する差別、在日韓国・朝鮮人などの在日外国人への差別、女性に対する差別、同性愛者などの性的マイノリティへの差別です。こうした差別や偏見をなくし、誰もが人として尊重される社会、人々の多様性、多様な生き方や価値観に寛容な社会を実現する。この国の未来を考える時、こうした社会の実現に向けて私たちが努力することが極めて大切であると考えます。

 

 一般社団法人日本共生社会推進協会は、2018年5月30日に設立されました。設立の趣旨は、障がい者、高齢者、貧困状態にある母子家庭、ニート、引きこもりなどの人々が、社会的に排除されない社会、差別のない社会、つまり共生社会を実現することです。学会組織は調査研究団体という学術団体としての側面ばかりでなく、高齢者、障がい者、女性などの雇用を促進して社会参加を促し、差別をなくすという社会的課題を取り上げたソーシャルビジネスを行うことを意図した団体という側面ももっています。

 

 日本のソーシャルビジネスの発展はこれからです。ソーシャルビジネスが盛んなアメリカやイギリスは何百万人もの雇用を生み出していますが、日本はいまだ数万人規模です。社会的弱者と言われる障がい者、高齢者などの雇用機会を生み出し、積極的に社会に参画してもらうソーシャルビジネスが盛んになることが求められています。

 

 私は、長年幼児期インクルーシブ保育の研究に携わりました。その経験から、幼児期に障がいがある子どもや外国籍の子どもなど、様々な子どもが互いに関わることが、多様性に寛容な人格の育成に良い影響を与えると考えています。地域社会でソーシャルインクルージョンの思潮を涵養していくためには、幼児期や学童期にインクルーシブ教育を受け、その場を通じて互いに関わりながら成長していく体験が重要だと考えています。

 

 また東日本大震災後、ある学会に属しながら宮城県のとある地区のコミュニティ支援活動を6年間継続的に行ってきました。その時痛感した課題は、コミュニティへの支援活動が被災地住民の雇用を含めた形で事業を展開することが重要であるということでした。当時はそうした形での事業はできませんでした。マンパワーと資金が不足して十分な成果を上げることができず、ボランティア活動で終わってしまいました。その当時はソーシャルビジネスという発想がなかったのです。こうした経験、教訓を無駄にしないためにも本学会は、差別のない社会を目指すという社会課題に取り組み、それをもって社会貢献していきたいと考えています。

 

 皆さま、差別のない社会、共生社会を実現するため のソーシャルビジネスを共にやっていきましょう。

 

<著作>

〇『これからの「共生社会」を考える』(副題:多様性を受容するインクルーシブな社会づくり)小山望、勅使河原隆行、内城喜貴 監修 一般社団法人 日本共生社会推進協会編 福村出版 2020年

〇単著「インクルーシブ保育における園児の社会的相互作用と保育者の役割―障がいのある子どもとない子どもの友だちづくりー」福村出版 2018年

〇監修「人間関係ハンドブック」 福村出版 2017年

〇共著「南三陸町への支援活動に関する考察―分断と格差についてー」埼玉学園大学心理臨床研究、1.1-13. 2015年

〇共編「インクルーシブ保育っていいね―一人ひとりが大切にされる保育をめざしてー」 福村出版 2013年

〇単著「インクルーシブ保育における自閉的な幼児と健常児との社会的相互作用についての一考察」人間関係学研究、17(2),13-28. 2011年